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あっ、先輩だ。前を行く語共々ちょっと離れたところを通った先輩に向けて頭を下げた。
この高校の野球部のルールとして、離れてるときは声を出して挨拶しなくてもいいっていうのはありがたい。
恥ずかしいもんなやっぱり。
野球は好きだ。
野球をやっている間だけは嫌なことも忘れられるから。
この千葉県立丘の上高校の野球部は強くも弱くもないが、父さんに負担をかけたくなかったし、野球も続けたかったから最寄りの高校というわけで選んだ。
けど、幼馴染の語はいるし、中学からの友達も多く進学しているし、低リスクの選択肢のわりにはそれなりに楽しそうだと思った。
そんなわけで今日も友達と馬鹿話して、退屈な授業を受けて、放課後に練習して……。
そして代わり映えのない今日が終わり、代わり映えのない明日がやってくる。
そうして俺の人生は平凡なまま過ぎていき、平凡な山場を越え、平凡な喜びを味わい、平凡な終わりを迎える。
そう思っていた。
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