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「なあ、実は何食うんだよ~早く決めろよ~」
語に話しかけられていた。
すぐ考え込むのは俺の癖だな……。
そういうキャラ付の方がイケてるし。
俺はニヒルに唇を吊り上げてみせた。
「ん、ああ……わりわり」
売店は昼時なので結構混んでいる。俺は一応家から弁当を持ってきているのだが、補充でパンでも買おうと思っていた。
「早くぅ~! 早くぅ~! 実早くぅ~」
待ってろ天性の食いしん坊。
語の声と腹の虫に急かされながら俺達がパンを選んでいる時だった。
「語ぅ、実だって今来たばっかなんだからもうちょい考えさせてやれよ」
いつの間にか、いかにも体育会系な感じで、真っ黒に日焼けした元気いっぱいの少年がやってきていた。
こいつは国分将語(こくぶ しょうご)。仲間内では唯一、辛抱強く語にツッコみ続ける希少人物。
背は小さく、すばしっこい奴だ。
背の低さを本人はあまり気にしていない。
いつの日か必ず『爆発的成長期』ってやつが来ると信じているかららしい。
俺はひそかにその説の信奉者であった。
「っていうか選ぶの早すぎるんだよ語はよぉ」
「え~だってさぁ~」
バカっぽいチビとふとっちょを後目に、俺が選んだパンの会計を済ませていると、落ち着いた声が参加してきた。
「その通りだ。実も俺たちも、お前と違って授業中に今日の昼飯の献立を決めているわけではない」
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