その執事、鬼畜。

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慣れないことを口にした羞恥をごまかすように顔の前で両手を振る。だが、タイミングの悪いことに赤信号で捕まり手首を掴みとられた俺は、引き寄せられるがまま唇を奪われてしまった。 「ちゃんと聞いたぜ?そうか、惚れ直したか」 わざとらしくリップ音を立てて離れていった唇は悪戯に孤を描く。笑みの真意に気付いたのは東條の運転する車が俺の家がある方向とは反対に行こうとした時である。 「ちょっと待てよ!どこに行くつもりだよ!?」 「バーカ、このまま帰すと思ってんのか」 「いやいやいや!帰せって、冗談抜きで!」 「それこそ冗談だろ?…帰してなんかやんねぇよ、朝までたーっぷり可愛いがってやるぜ」 動物のように野生的な瞳で東條は言った。すっかり乗り気な東條を前にどうあがいても逃れられないことを知っている俺は、自分の身を考え盛大にため息を吐き出す。 この男が見返りなしに面倒事を引き受けるわけがないと最初に気が付けば良かった。少しばかり説得役を引き受けたことを後悔した都貴なのである。 fin.
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