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「…和那くん、着いたよ」
連れて来られた場所は、見た目こそごくごく普通のバーだが、自分達と入れ違いに店内から出てきたカップルを見て俺は沓哉の連れて来たくない理由が分かった。
男同士…しかも二丁目…
「僕が和那くんを連れて来たくない理由分かった?」
「大体は…」
「…まぁ、ここまで来たら仕方ないか。車に残してなんて心配で行けないしね」
そう言って顔を引きつらせる俺の腰に沓哉は手を回し体を密着させる。
「沓哉…!?」
「…いーい?和那くん、僕の側から離れちゃダメだよ」
念を押して言われ頷くと、沓哉は腰に手を回したまま淡い照明が照らす薄暗い店内を進んでいく。
気のせいだろうか、もの凄く視線を感じる…
「あの沓…」
「沓哉ちゃん!来てくれたのねーありがとう!」
視線に不安を感じ沓哉に声をかけようとした所を、ダンディな声に掻き消されてしまった。
「マスター、お久しぶりです」
「ホント久しぶりね!」
沓哉がマスターと呼んだダンディな声の主を目の前にして俺は固まる。
うっとりする程渋い声に、顎髭を生やしたダンディなマスターがオネエ言葉。色んな意味で衝撃的すぎて言葉が出てこない。
「あら、そちらさんは?」
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