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マスターに視線を向けられ思わずびくつくと、隣で沓哉がクスッと笑う。
「俺は、その…」
「この子は僕の大切な恋人だよ、可愛いからって食べちゃダメだよマスター」
いつもと変わらない笑みなのに、沓哉の目が笑っていない。
怖いんですけど…
バーテン服に着替える為に裏へ沓哉が引っ込んだのを確認して、マスターはカウンターから身を乗り出して尋ねてきた。
「和那くんって言ったっけ?あんた、何者!?」
「え…何者って…」
「あの沓哉ちゃんをべた惚れにさせるなんて、和那くんただ者じゃないわね」
興味深そうにマスターは俺の顔を見る。
「は、はぁ…」
マスターの言葉にどう反応していいか分からず、苦笑いを浮かべておいた。
「…ねぇ、君一人?見ない顔だね」
沓哉を待っていると肩に手を置かれる。振り返るとそこにはスーツの決まった沓哉にも勝るとも劣らない美形が立っていた。
男は隣に腰を下ろすと頬杖をつき熱い眼差しを向けてくる。
「良かったら俺と話さない?」
するり、男の手が伸びてきて俺の手を掴む。
「ね、名前…なんて言うの?」
「…名前ですか…?かず、な…ですけど」
相手の強引さに少し引き気味に答えた。
「へぇ、和那くんって言うんだ。いいね可愛い、俺のタイプ」
もしかしなくてもこれ、口説かれてる…?
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