その執事、鬼畜。

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高宮さんとの電話を切り、自室で作業している東條の元へ行く。気配に気付いた東條は仕事の資料を片手に振り向いた。 「ちゃんと断ったか?」 「いや、引き受けた」 「な、にぃ…?」 俺の言葉に東條の顔がみるみるうちに引きつっていく。離れていても感じとれる怒りのオーラに、俺は後退りしそうになりながら話を続けた。 「だって困ってたじゃんよ…っ、東條しか頼みの綱がいなかったんだぜ。可哀相だろ…」 「だからってな…俺があいつを助けてやる義理なんてねぇだろ。とにかく俺は代役を引き受ける気なんざさらさらないからな」 頑なに拒む東條だが、ここで折れてしまっては説得を引き受けた俺の面目丸潰れである。 「…そんなこと言わねぇでさ、頼むよ東條…」 「お前もしつこいな…」 引き下がらない俺に東條は心底呆れた様子でため息を吐き出した。 「…第一、代理を引き受けたとして俺に何のメリットがあるんだ?あぁ?」 「メリット!?…えっと、燕尾服姿の…東條を…見て…俺が喜ぶ?」 「…それはお前のメリットだろうが、馬鹿か……っとに、お前は」 ククッと堪えきれなくなった東條は小さな笑いを漏らした。ハッとして見上げるとグレーの瞳は観念したようでやんわりと細められる。
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