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「…仕方ねぇな」
「え…じゃあ!」
「やってやるよ、俺が燕尾服を着ると愛しの都貴くんが喜んでくれんだろ?」
俺の為、そう言って執事喫茶(高宮さんの代理)を引き受けてくれた東條。翌日、俺は授業を終えてから東條の様子を伺うべく、一日限りのバイト先である執事喫茶を訪れた。まず俺が驚いたのは店の前に置かれた黒板に書かれた紹介文である。
『眼鏡week特別企画!本日限定、鬼畜執事がお嬢様方のお世話を致します。はしたないお嬢様には鬼畜に素敵な躾も…?』
「………」
どこをどう突っ込んでいいか分からないけど、これって東條のことだよな…。
店の前でア然としていると、燕尾服姿の男にエスコートされて女性客が出てきた。
「またのお帰りをお待ちしております、お嬢様」
女性客を見送った燕尾服姿の男もとい執事は俺の存在に気付き、にっこり笑顔で深々と頭を下げる。
「お帰りなさいませ、お坊ちゃま」
「あ、あの…俺この人の知り合いなんですけど…」
いきなり声をかけられ、対応にあたふためきながら黒板を指差した。執事は事を把握して頷く。
「都貴坊ちゃん、でございますね。東條から話は伺っております」
そう言って執事が扉を開けると、そこはまるで別世界。英国風のお屋敷を思わせる内装と品の良い執事が俺を出迎えた。
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