その執事、鬼畜。

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「お帰りなさいませ、お坊ちゃま」 「お坊ちゃま、上着お預かり致します」 「お荷物お持ち致します」 執事の畏まった言い方に恐縮してしまう。流れるように華麗な執事の動きに感心する暇もなく、一人掛けのソファーまで案内され席につかされた。 「こちらメニューでございます。お決まりになりましたら、お手元のハンドベルを鳴らして下さいませ」 「あ、は…はい…!」 戸惑う俺をエスコートし席につかせた執事はお辞儀をして下がっていく。九割が女性といっても過言ではない客層。どこか落ち着かず店内をキョロキョロ見回していると、見覚えのある男が俺のテーブルへと女性の視線をくぎづけにしながら近づいてきた。 燕尾服を見事に着こなした東條は、明らかな営業用と思われる猫かぶりな笑みを俺に向ける。 「お坊ちゃま、お決まりになりましたか?」 「…いや、まだ決まんなくて…てか、なんか様になってるな…」 俺の言葉に一瞬だけ口の端を吊り上げ勝ち誇ったように笑うと、東條はメニューを差した。 「こちらなど如何でしょう」 「じゃあ…それで…お願い、します…」 薦められるままアフタヌーンティーセットを注文する。少しして東條が銀で装飾されたワゴンに注文した品を積んでやってきた。
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