その執事、鬼畜。

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「お待たせ致しました」 テーブルに置かれたケーキスタンド。1番下の段にはスコーンに赤いジャムとクロテッドクリーム、真ん中の段にはフィルドスタイルのサンドイッチ。1番上の段には小さなケーキが可愛いらしく飾られていた。 東條が一つずつ説明をしてくれる。この短時間で学んだのだろうか、それとも元々知識があったのだろうか。 ティーカップに紅茶を注ぐ東條を尻目に、やっぱりただ者ではないことを思い知らされる。 「…こちらアールグレイでございます。このカップは坊ちゃまをイメージして選びました。可愛いらしく、それでいて美しくもある…坊ちゃまにぴったりでしょう」 「ぶっ…!」 東條の言葉に思わず口に含んでいた紅茶を吹き出してしまった。こそばゆくなるような甘い台詞は今までも聞いてきたが、これは耐え切れない。 「…なに言って」 「お坊ちゃま、はしたのうございます」 言葉を遮るようにしてナプキンを手渡される。とりあえず渡されたナプキンで口元を拭っていると、なんだか辺りがざわめき始めていた。 何だ…? 「…お坊ちゃま」 すっかりこの呼び方に反応するようになった俺は東條の声に振り向く。振り向いたと同時に耳元へ唇を寄せられた。
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