転校生、西園寺有紀

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今年も桜が咲いた。 そして散った。 毎年同じことを繰り返す桜の姿を見て、杉谷勇(スギタニ ユウ)は思うことがある。 別に桜だからというわけではない。 ただ今がそんな季節なだけだ。 (桜も周りの奴等も一緒だな…) ちなみに説明をしておくと、勇には詩やポエムなどを書くことはない。 そして、綺麗な人の前で「あなたは美しすぎる…」なんてことを言うこともない。 つまり何が言いたいのかと言うと、勇の思ったことには特に深い意味はないと言うことだ。 桜も周りの奴等も一緒だな… この言葉の意味、それは……勇の周りによって来る人たちのことを言っているのだ。 桜は勝手に咲いて勝手に散る。 人は勝手に寄ってきて勝手にいなくなる。 今まで勇の周りの人たちはそんな人しかいなかったのだ。 ちなみにこれは周りの人たちが悪いわけでわない。 どちらかといえば、勇が悪いのだ。 ここで勇の性格の説明をしておこう。 まず、勇は性格は暗くはない。 だが、正直に思ったことを言うことが普通の人より多いだけだ。 しかしその部分が周りの人を傷つけてしまう。 だから勇の周りには人が集まらない。 けど勇はそんなことをいちいち気にする性格でもない。 まぁ逆に気にした方がいいのかもしれないが… さて話を戻そう。 勇はこの春から高校二年生となった。 もちろんクラス替えがあった。 だから、4月の時はまだ勇に近づいてくる人もいた。 しかし今は5月、もうそんな人はいない。 そんなことがあってさっきの言葉が勇の頭の中によぎったのだ。 「ねぇ知ってる?」 「えっなになに?」 「今日うちのクラスに転校生くるらしいよ?」 「マジで?それヤバくね?」 「男かな女かな?」 花が散った外の桜を自分の机から見ていた勇に クラスの女子が話す言葉が聞こえた。 (この時期に来る転校生ってなんだよ。 もうちょっと頑張って4月からくればいいのに…) そんなくだらないことを勇が考えていたら チャイムがなった。 もう朝礼の時間になったのだ。
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