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時間が過ぎて昼休みの時間になった。
有紀の周りには休み時間になるとクラスメイトが集まった。
転校生と仲良くしたいという気持ちでみんながよってくるので
有紀も楽しくみんなと話をしている。
勇はそのグループには入ろうとはしなかった。
別に勇がみんなのことが嫌いだからではない。
ただ勇と話すとみんながちょっと普段と雰囲気が変わる。
勇はそれを感じてしまう。
だから自分からはグループには入らないのだ。
(ったく…転校生の一人ぐらいでよくそんなに盛り上がれるよな…)
勇はそんなことを思いながら
ふと昔のことを思い出した。
(あぁ!!なんでこんなときに思い出したくもないことが頭によぎるんだよ!!)
勇は気分を変えるために昼食をとることにした。
(気分転換にいつもの屋上で弁当でも食べるかな…)
「ゆ~う~っ!」
(この声は…)
「なんだよ有紀?」
「お昼ご飯食べるの?」
「まぁ昼だからな。」
「私もついていっていい?」
「好きにしろ。」
「えっ?」
「聞こえなかったのかよ。
好きにしろって。」
「もう(笑)勇も照れ屋さんなんだから(笑)」
「はぁ?」
「ついてきてほしいのなら、そう素直に言えばいいのに(笑)」
「やっぱ来るな。」
「わー!!ごめんなさい!!」
(俺には有紀が何をしたいのか全く分からん…)
「ごめんねぇ…勇。」
「別に怒ってねぇよ。
ほら、ついてくるなら早く来い。」
「あー待ってよう!」
「待つほど俺は優しくねぇわ。」
こうして二人はお昼を食べるために
屋上へと向かった。
屋上は誰もいなかった。
いやいつも誰もいないのだ。
けどそんな屋上が勇はこの学校の中で一番好きな場所だった。
人一倍周りの空気を感じることが出来るが、その空気を良い方向に運ぶことが出来ない勇にとって、
人のいない空間が一番楽なのだ。
そんな勇を拒むことのない屋上にいつしか
勇は毎日のように来るようになっていた。
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