転校生、西園寺有紀

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昼休みが終わり、勇と有紀はダッシュで教室に戻ってきた。 そんな二人を見てみんなが、特に男子からの殺意にも似た目が勇をにらんでいた。 「なんだよ。」 誰も勇の言葉に反応しない。 「言いたいことがあるなら、言えよ。 何もないならいちいちにらむな!」 勇が少し強い口調で言うと 一人の男が言葉を発した。 「勇、そんなに強く言う必要はないんじゃねぇか?」 杉谷勇のことを勇と言うクラスメイト。 西園寺有紀以外にはあの男しかいない。 そう、原彰(ハラ アキラ)だ。 原彰 勇のことを昔から知っている 勇の唯一の幼馴染みだ。 「おい、勇聞いてんのかよ?」 「彰は関係ないだろ…」 「全く相変わらずの性格だな。」 「………彰、それ以上は何も言うんじゃね。」 「俺はこれ以上何も言わねぇよ。 ただお前は変わらねぇよ あの日から。」 「っ!てめぇっ!!」 勇が彰の方に向かっていった。 勇の拳は強く握られていた。 「また、そうやって同じことを繰り返すのかよ。」 彰の言葉を聞くと 勇の動きが止まった。 そしてゆっくりと拳をおろした。 「……俺は変わらねぇよ。一生な。」 そう言うと勇は自分の席へと行き、鞄をとって帰ろうとした。 彰はただそれを見てるだけ。 「ちょっとっ!!勇っ! なんで帰るのよ! 私との約束は? 学校案内の約束は?」 「他のやつと行けよ。 有紀なら頼めば誰だって嫌とは言わねぇよ。 有紀は俺とは違うんだからな。」 勇は少し寂しそうな目をして教室を出ていった。 「待ってよ!」 有紀は勇を追いかけようとしたが出来なかった。 「勇のことを思うなら、今は一人にしてやってくれ。」 そんな彰の言葉によって足が止まったのだ。 「あなたは勇のこと知ってるの…?」 「一応幼馴染みっていうやつだな。」 「じゃあ勇のこと教えて!!」 「それは無理だ。 誰にだって知られたくないことはあるからな。」
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