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歩く先には死体しか転がっていない。
歩んで来たのは血塗られた道。
進む先には死体しか無く、戻る道にも死体しか無い。
彼は常に死と隣り合わせの世界を歩いてきた。
いや――
実際、死自体をも体験した。
そこから帰還した為の副作用か、それとも呪いか。
彼には死が付き纏っていた。
圧倒的なまでの死が。
彼は人を憎んだ。
世界を憎んだ。
等しく全てを憎んだ。
その為か、彼に寄り添うものは一つしか無い。
死と言う名の、慣れ親しんだ恐怖だけが。
彼が思い描くは黒い炎。
全てを焼き尽くす黒き焔。
全てを薙ぎ倒す死のイメージ。
彼はそれを夢想する。
どちらにしろ――彼にはそれだけしか残っていないのだから。
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