個人授業

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馬鹿か私は…あ、いや馬鹿か。 …ってそうじゃなくて、何故私がこのどす黒教師にときめかなきゃなんないんだ。 有り得ない。 有り得るわけがない。 あっていいはずがない。 きっと普段見慣れないちゃんとした笑顔を見たからだ。そうに決まっている。 「おい、馬鹿?アホ…?馬…」 「いや聞こえてるから。」 ほら、やっぱりときめくはずがない。 馬鹿なのもアホなのも、否定はしない。でも、真剣に呼ばれると、分かっていてもちょっとへコむ。 「もう…、ちゃんと名前で呼んでくれます?」 私は、少し皮肉も込めて言ったつもりだったのだが、先生は何故か笑顔を私にみせた。 な、なんか嫌な予感がする。 「お前はそれでいいのか?」 「…いいに決まってるでしょうが。」 なにか裏がありそうで、一瞬黙ってしまった。 それに、言ったのは私なんだ。私が嫌だったら言わないはずでしょうよ。そんな分かりきったことを、どうして確認するんだろう。 でも、承諾してしまったものは仕方ない。 第一、神流という名前を使ってからかうことなんて出来やしないだろう。 私が先生の企みについて考えていると、その彼はにっこりと笑って(それはそれは黒かった)、言った。 「分かった。そうするよ。 頼むぞ、奈津。」 「…は?」
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