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「…一つだけ、お願いを聞いてもらえませんか?」
エルフ男「聞くだけ聞いてやる」
「ありがとうございます。お願いというのはですね──」
…………
エルフ「男ー! 見てみて! いっぱい採ってきたよ!」
「おぉ、美味しそうだね。それもこんなに沢山。
でも、あんまり服はたくし上げないようにね?」
エルフ「? それより、はいこれ! 食べてみて?」
「ん、いただきます」シャクシャク
エルフ「…どう?」
「瑞々しくて、ほのかに甘くて、とっても美味しいよ」ニコッ
エルフ「っ! えへへ…」
エルフ「眠たいぃ…」
「お腹いっぱいになったし、日差しも心地いいからね」ナデナデ
エルフ「んー…」スヤスヤ
「……」ナデナデ
「ごめんね…」
…………
「──僕と関わった記憶を、あの子から消して欲しいんです」
エルフ男「なに…?」
「あなた方のお仲間には、強い魔力を持っている方がいらっしゃると、あの子から聞きました。その方なら、可能なのでは?」
エルフ男「まぁ、恐らくはな。だが、いいのか?」
「……はい、お願いします」
…………
(本来なら、会うことは無いんだ。そう、『会わなかった』ことに直すだけ……)
「ふあぁ…」
「僕も、一眠りしようかな…」
エルフ「くぅ…くぅ…」スヤスヤ
「……zzZ」
ガササッ
「……っは!」ビクッ
「しまった、もう夜だ。エルフ?」
「…エルフ?」
シーン
「……ふむ、彼がもう連れてったのかな。お前は何か知ってるかい?」
ヒン ブルルル
「ははっ、喋れるわけないよな。さ、帰ろうか…」
エルフ男「人間! まだ森にいたか!」
「うわぁ! な、何ですか!?」
エルフ男「非常に癪だが、頼めるのが他にいない! 手を貸してくれ!」
「何か、あったんですか?」
エルフ男「…あの子が、さらわれた」
「…え? い、一体どうして!? 誰に!」
エルフ男「あの子を連れて帰ってる途中……未だこの森に潜んでいた人間共に……」
「他の仲間はどうしたんですか!?」
エルフ男「他の男は里の修復で疲弊している! 頼めるのはお前しかいなかったんだ!」
「…案内して下さい! 早く!」
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