11人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
一人の老婆が
暖炉の前で静かに座っている。
どこか気品と哀愁を漂わせながら
ただ一人で。
顔立ちからも伺えるように
かつては美しかったのだろう。
けれど、綺麗なブロンドだったと思われる髪は、
今や時の流れに
逆らえるはずもなく
白髪が混じっている。
顔には皺が入り、目の下には隈が。
けれど彼女の蒼緑の瞳だけは
曇る事なく今もただ澄んでいた。
その目はただ一点─彼女の
右手の小指にある薔薇の
モチーフの指輪に注がれていた。
食い入るようにただじっと
見つめている。
懐かしげで寂しげな瞳で。
最初のコメントを投稿しよう!