Prologue

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「自分の好きなように世界を〝創造〟し、その出来栄えを競おうじゃないか」  これを聞いたある女神様は、競争事にも世界を創造する事にも関心はありませんでしたが、周りの神々が夢中になって〝創って〟いるので、諦めて「世界創り」に取り掛かりました。  物憂げに女神様は早速〝創って〟みようとして、ふと思い止まりました。  「好きな世界を創る」と言っても、神は全能なので、他の神々が廻らせる思案の内容も判ってしまいます。  案の定、考えていた世界は既に創られしまい、どうしたものかと暫く懊悩していた女神様ですが、やがて両手を胸の前で祈るように組み、ゆっくりと手を解きました。  すると開かれた掌の上に、蒼が殆どを占める天体が空を漂っていました。  その天体をいとおしそうに見つめると、徐に陶磁のように滑らかな肌を持つ腕を引っ掻き、切り開かれた肌から流れだす絖る銀色の液体を何滴か、蒼い星へ垂らしました。 「私の代わりに、世界を創造しなさい。私はその世界に棲む事にしよう」  女神様は己の力をほんの少し捻出し、生まれたばかりの僅かな大地に棲まわせる何人かの神を創造したのです。  そうして女神様は天体をそっと押し遣ると、姿を消してしまいました。  以来、その女神様の姿を見た神様はいませんでした。
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