序章

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ソレを見た途端に少年は恐怖を感じた。本能が逃げろ、と叫んでいる。だが動かない、危険だということは理解できるが足は震え、ろくに力も入らない状態になっている。 冷静になれば、逃げ切れたかも知れない。その場で息を潜めて静かに見過ごしていれば。この目や鼻のないヤツがどうやって獲物を探すのかを冷静に考えれば。 だが、恐怖に囚われた少年は判断を間違えた。ようやく動き出した体を引きずる様に後退させる。 途端、ソレはグルリと体の向きを変えると、少年の方に向き直る。聴覚に特化したソレは逃げようとする獲物の声を捕えた。 ギイイィャャャァァアア!!! 咆哮をあげるソレを前に少年は自分の死を認めるしかなかった。けどただ死ぬくらいなら最後の抵抗くらいはしたい。なにもしないよりは何かした方がマシだから。 「我求めるは裁きの炎、その役は断罪、その形は剣、地獄の果てより出でて我が力となれ」 歌うような軽い調子で言うと、少年の周りから紅い炎が溢れだす。炎は空中で形を作り3本の剣となる。 「行け、フレイムソード」 少年の言葉を引き金に3本の剣は土の塊に向かって勢いよく飛んでいく。 魔法とは主に火、水、風、土、雷の五属性である。だが、稀に特殊な属性、例えるなら光、闇、音なども扱える者も存在する。更に威力や範囲、魔力消費量や取得難易度によって下級、中級、上級、最上級に分かれている。 少年の使ったフレイムソードは火属性の下級魔法だ。
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