私に足りなかったもの

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リツが私の絵を描いてくれるというから、お気に入りの白いワンピースを着て出掛けようとした。 それを父はとめたの。 毎日浮かれながら出掛けていくけれど、男でも出来たのかと。 家に引き込もって社会に出ようとしないやつにそんなことは許さないって、父は怒鳴ったわ。 私のことを心配してくれる父親は憧れだったけれど、こんな束縛は違う。 こんなの理想の父でも何でもない! 私、カッとなって近くにあったガラスの灰皿で何度も父を殴りました。 父は倒れたけど這いつくばりながら、許さないと言ったの。 そのしぶとさにまたイラッとして、台所の包丁を持ち出して、うつ伏せに倒れる父の背中をメッタ刺しにしたわ。 ようやく父は死んだ。 死体は夜の湖にでも捨てるとして、どうしましょう! これからリツに絵を描いてもらうというのに、真っ白だったワンピースが血で真っ赤じゃない! 急いでワンピースを水で洗ったわ。 私の必死な思いが通じたのか、ワンピースはすぐにシミ1つ残さずきれいになった。 ほっとしてそのワンピースを着て出掛けようとしたわ。 でもそこで恐ろしいことが起きたの。
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