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「珍しく、というか、意外に聞き分けがいいな」
「興味がないだけよ。誰だって、興味のないものに関知しようとはしないでしょう?」
「……そりゃそうか」
興味ないという表現に、少し乱暴さを感じはしたが、プライドの高い彼女に否定をされない、ということは少なからずとも認められた、ということだ。
世の中には僕と忍のような関係が存在する。
それについての認識を更新されたのだ。
主義を曲げて。
妥協して。
「まあ、私の協力項目は、もとよりあなたの連れの捜索だったし、その連れがどこにいるかわかった以上、なにかを手伝う必要はないのだけれど──いいわ。ここからは好意として受け取りなさい。特別ゲストを呼んだげる」
ふふふ。
と、不敵な笑みを浮かべるレミリア。
いまいち信用していいのかわからないけれど、すがるものがそれしかないのだから仕方ない。
「ああ、頼む」
僕は特に意見を添えることなく首肯した。
「よかろうよかろう」
悪代官みたいな笑みを浮かべながら気のいい返事が返ってきた。
無性に心配だ……。
「……しかし、そうなると、ゲストが来るまでここを出れないってことだよな? 一体、あとどれくらいでくるんだ?」
「30分くらい」
「今思い付いたことじゃなかったのかよ……。もしかして、近所なのか?」
「いや、そこは私得意の運命操作で無理やり誘い込むのよ。どうやら、私の能力が効かないのはあなただけみたいだから」
「巻き込んでるみたいだな」
「そうね。アポなんてとる気はないから、言うこと聞かなかったら肉体言語にて語るのみね」
「お前はあの殺伐とした魔法の国の王女かよ」
「あら、これでもサブミッションは得意中の得意だけれど?」
「いい。いいよ。このネタ、知ってる人しかわからないから」
突っ込みを諦めなければならない時もあるのだ。
「で、あと30分、何して時間潰す?」
唐突に、そんな問いを投げてくるレミリア。
「いや、別にゆっくりしてるよ。ここ三日間、疲れることばっかだったしな」
「何言ってるのよ。私を退屈させていいわけ?」
「は?」
またこいつは突拍子もなく変な振りをしてきやがる。
「何が言いたいんだよ」
「付き合ってほしいことがあるのよ」
それだけ言うと、レミリアは部屋の隅の方で、奇跡的に健全な人形遊びを成立させているフランドールのもとに歩み寄った。
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