こよみゴッデス──002

6/13
前へ
/78ページ
次へ
「珍しく、というか、意外に聞き分けがいいな」 「興味がないだけよ。誰だって、興味のないものに関知しようとはしないでしょう?」 「……そりゃそうか」 興味ないという表現に、少し乱暴さを感じはしたが、プライドの高い彼女に否定をされない、ということは少なからずとも認められた、ということだ。 世の中には僕と忍のような関係が存在する。 それについての認識を更新されたのだ。 主義を曲げて。 妥協して。 「まあ、私の協力項目は、もとよりあなたの連れの捜索だったし、その連れがどこにいるかわかった以上、なにかを手伝う必要はないのだけれど──いいわ。ここからは好意として受け取りなさい。特別ゲストを呼んだげる」 ふふふ。 と、不敵な笑みを浮かべるレミリア。 いまいち信用していいのかわからないけれど、すがるものがそれしかないのだから仕方ない。 「ああ、頼む」 僕は特に意見を添えることなく首肯した。 「よかろうよかろう」 悪代官みたいな笑みを浮かべながら気のいい返事が返ってきた。 無性に心配だ……。 「……しかし、そうなると、ゲストが来るまでここを出れないってことだよな? 一体、あとどれくらいでくるんだ?」 「30分くらい」 「今思い付いたことじゃなかったのかよ……。もしかして、近所なのか?」 「いや、そこは私得意の運命操作で無理やり誘い込むのよ。どうやら、私の能力が効かないのはあなただけみたいだから」 「巻き込んでるみたいだな」 「そうね。アポなんてとる気はないから、言うこと聞かなかったら肉体言語にて語るのみね」 「お前はあの殺伐とした魔法の国の王女かよ」 「あら、これでもサブミッションは得意中の得意だけれど?」 「いい。いいよ。このネタ、知ってる人しかわからないから」 突っ込みを諦めなければならない時もあるのだ。 「で、あと30分、何して時間潰す?」 唐突に、そんな問いを投げてくるレミリア。 「いや、別にゆっくりしてるよ。ここ三日間、疲れることばっかだったしな」 「何言ってるのよ。私を退屈させていいわけ?」 「は?」 またこいつは突拍子もなく変な振りをしてきやがる。 「何が言いたいんだよ」 「付き合ってほしいことがあるのよ」 それだけ言うと、レミリアは部屋の隅の方で、奇跡的に健全な人形遊びを成立させているフランドールのもとに歩み寄った。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

482人が本棚に入れています
本棚に追加