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2人は既に弁当を食べ終えたようで話をしている。
「そうだ、今日も…一緒に帰らない?」
「あ、ごめん…今日は用事というか…俺の家族の5年目の失踪日なんだ。」
京子は言われて気がついたようで、顔が暗くなった。
「ごめん…」
龍慈はニカッと笑い、
「いいって!大体、交通事故で車がペシャンコだったのに死体が見つからないっておかしいだろ?」
そう、龍慈には両親と1つ歳がはなれた妹がいる…
いや、「いた。」の方が正しいのか…
龍慈の12歳の誕生日のプレゼントを3人が買いに行く途中、信号無視の車に突っ込まれたのだ。
「でも、ないってことはまだ生きてい…『キーンコーンカーンコーン~キーンコーンカーンコーン』」
まるで見計らったように昼休み終了のチャイムがなった。
「5校時始まっちゃうから自分のクラスに戻らなきゃまずいんじゃないか?」
京子はまだ釈然としない様子だったが、うんと頷き教室を出て行った。
「ふぅ…俺だって助かってるって思いたいさ…」
窓から見えた雲1つない空は深い紺色に見えた。
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