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走るのに自信はあった。
けど、息切れが運動不足を象徴した。
疲れた、とか、足を止めたいという感情よりも、驚愕、というか。
驚嘆というか、衝撃というか。
何も信じたくなくて、ひたすら走った。
現実は、逃げていた。
数人の大人達がさっきから俺を追いかけ回している。
はっはー捕まるもんかこの野郎と余裕をぶっこいてるフリをした。
だけど、もういっぱいいっぱいだった。
ーー……何が起きているんだ?
俺は父親から逃げている。
弟が今地上に居なくて良かったと思った。
「しっつけえなあ」
しつこい。鬱陶しい。
泣きたくなるのも我慢した。
泣いてなんかいられないし、今から俺は一人の親友の人生を壊しにいく。
仕方ないと纏めてしまえば楽になれる。
ああ、楽になりてえなあ。
何でだろう。いつから?
いつから俺は父親と敵対するようになった?
素直に父親の側に居れば幸せだった?
知らない人間を切り落として、自分だけ笑っていれば良かった?
「……………はぁ……」
違うな。やっぱりそれは違う。
いいこになりたい訳でもないし、ヒーローになりたい訳でもない。
寧ろヒーローは折原だな。
だけど、だけど出来なかった。
だから俺は、無実の殺人犯になった。
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