vol.0.5 Another Story

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走るのに自信はあった。 けど、息切れが運動不足を象徴した。 疲れた、とか、足を止めたいという感情よりも、驚愕、というか。 驚嘆というか、衝撃というか。 何も信じたくなくて、ひたすら走った。 現実は、逃げていた。 数人の大人達がさっきから俺を追いかけ回している。 はっはー捕まるもんかこの野郎と余裕をぶっこいてるフリをした。 だけど、もういっぱいいっぱいだった。 ーー……何が起きているんだ? 俺は父親から逃げている。 弟が今地上に居なくて良かったと思った。 「しっつけえなあ」 しつこい。鬱陶しい。 泣きたくなるのも我慢した。 泣いてなんかいられないし、今から俺は一人の親友の人生を壊しにいく。 仕方ないと纏めてしまえば楽になれる。 ああ、楽になりてえなあ。 何でだろう。いつから? いつから俺は父親と敵対するようになった? 素直に父親の側に居れば幸せだった? 知らない人間を切り落として、自分だけ笑っていれば良かった? 「……………はぁ……」 違うな。やっぱりそれは違う。 いいこになりたい訳でもないし、ヒーローになりたい訳でもない。 寧ろヒーローは折原だな。 だけど、だけど出来なかった。 だから俺は、無実の殺人犯になった。
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