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10月初めのその日、妙に寒い日だった。
いつものように吹奏楽部での練習後、友達と帰宅途中にラーメンを食べて帰り着いた。時間は夜8時をまわり、テレビでは人気のお笑い番組が始まっていた。
父、重信は仕事で朝にしか帰らない。長女の広美は結婚し、同じ県内だが田舎の農家に嫁いだ。次女、多恵子は近くのアパートで彼氏と同棲している。そして母の和美は、一週間前から検査入院をしていた。つまり家には一人だ。
テレビ番組も一番面白いコーナーに入り、笑っていた時、突然家の電話が鳴った。
「夜分遅くすみません。私、🌑🌑大学病院の中尾と申します」
唐突な自己紹介に驚く一隆。だが🌑🌑大学病院と言えば母が今検査入院している病院だ。不安がよぎる。
「失礼ですが、和美様の旦那様でしょうか」
「いえ、息子の一隆ですが、父は明日まで帰りません。」
病院の主治医からの連絡、さらには深刻な声ときたら、あまり良い話でないことは高校生の一隆にも容易にわかる。主治医がもしも改めて連絡する、と言ったなら、必ず用件を聞こうと思った。
「ああ、君があの一隆くんか…お父さんに話すつもりだったけど、一隆くんにも知ってもらったほうがいいな」
意外な言葉に唖然とする一隆。いや、それよりも…
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