~日常から非日常へ~

2/4
前へ
/53ページ
次へ
 10月初めのその日、妙に寒い日だった。  いつものように吹奏楽部での練習後、友達と帰宅途中にラーメンを食べて帰り着いた。時間は夜8時をまわり、テレビでは人気のお笑い番組が始まっていた。  父、重信は仕事で朝にしか帰らない。長女の広美は結婚し、同じ県内だが田舎の農家に嫁いだ。次女、多恵子は近くのアパートで彼氏と同棲している。そして母の和美は、一週間前から検査入院をしていた。つまり家には一人だ。  テレビ番組も一番面白いコーナーに入り、笑っていた時、突然家の電話が鳴った。  「夜分遅くすみません。私、🌑🌑大学病院の中尾と申します」  唐突な自己紹介に驚く一隆。だが🌑🌑大学病院と言えば母が今検査入院している病院だ。不安がよぎる。  「失礼ですが、和美様の旦那様でしょうか」  「いえ、息子の一隆ですが、父は明日まで帰りません。」  病院の主治医からの連絡、さらには深刻な声ときたら、あまり良い話でないことは高校生の一隆にも容易にわかる。主治医がもしも改めて連絡する、と言ったなら、必ず用件を聞こうと思った。  「ああ、君があの一隆くんか…お父さんに話すつもりだったけど、一隆くんにも知ってもらったほうがいいな」  意外な言葉に唖然とする一隆。いや、それよりも…
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

600人が本棚に入れています
本棚に追加