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「何をですか?僕にもってどういう意味ですか?」
一隆は少し興奮した。なぜなら最近母の様子が変だったからだ。
約二週間前、長女の広美と多恵子が実家に帰ってきて、数年ぶりに家族で夕食を食べたことがあった。久しぶりの一家団らんの夕食に母、和美も楽しかったのか、いつもより夕食を多く食べていた。
その時だ。母が吐いたのだ。
『吐く』というのは一般的には確かに珍しくはない。食べすぎたら誰しも吐く可能性はある。しかし、母和美は私達家族にとって女性の鏡のような存在で、昔ながらの『夫の後ろを一歩下がって歩く』ような母であり、ゲップやオナラなど下品には縁遠いのである。幼い頃、一隆もよく和美に
「吐くまで食べなさんな」
と怒られていた。そんな母が家族の前で吐いた。それが、どれほど重大なことかその場の全員が理解できた。
「ほら!片付けんや!!お前らボーっと見とかんで!!」
父、重信の一喝で我に帰り、その場の片付けが始まった。
一隆にとって異常に印象に残る出来事からわずか二週間。主治医の話を聞くのが怖かった。
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