始 <ハジマリ>

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柔らかな日差しが相変わらず、降り注いでいた。 開きっぱなしの窓は、絶好の風の通り道となり、秋の乾いた風がカーテンを揺らしながら、部屋の中に入り込む。 カーテンは波を打つかのように、何度も、不規則に揺れていた。 風の波が物を拐(さら)うように、カーテンはラジオのアンテナを引っかけて倒してしまった。 海のように静かに。 何事もないかのように穏やかに。 ごとり、という鈍い音と共にラジオの電源が入ったらしい。 ぴりぴりと電波の音がする。 しかも、先ほどよりもクリアに、電波の向こう側の人の声が聞こえる。 ――今朝の午前3時ごろ……東部カーシャ市サン地区の路上で、男性が血を流して倒れているのが発見され……病院に運ばれたが間も無く死亡が確認された―― 所々、電波が途切れ、音声が不明瞭になる。 しかし、先ほどまでよりかは、かなりマシのようだ。 ――警察とW.E.A.Dは近くにいた男を殺人の容疑で身柄を拘束し……逮捕された男は自らを……と名乗っているが、奇声をあげるなど精神状態はかなり不安定である為―― ラジオのパーソナリティーの男性が普段とは一味違った、深みのある声で淡々と読み上げていく。 そして音楽が入り、コーナーが変わる。 ――狩人(ハンター)って色々な仕事してるんですねぇー。あたし、全然そーゆーの意識してなかったんですけど―― 若い女性の声が、少し笑いながら、先ほどのニュースに一言を添えていた。 ――今じゃあ、初動捜査にも政府から認可を受けた団体なら参加可能らしいね。警察の人件費も馬鹿にならないからなあ。我々の命を死神から守る民間人、つまり狩人(ハンター)。応援していきたいね―― 先ほどの男性がいつもの少年のような声色で、他愛もなく続ける。 ――そうですね! CMの後は大人気占いコーナーです―― ――ディス プログラム プロデュースド バイ W.E.A.D 死神殲滅連盟――  
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