序章 <マエガキ>

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赤髪の少年は 鋭い眼光で睨みつけてきた。 いや、 この少年 何故、銃をつきつけられているのに こんなにも余裕でいられるのか? 「それはちょっと違う」 月の光りに照らされながら、 少年は不敵な笑みを浮かべた。 雪のよう白く、端正な顔が異臭を放つ水溜まりに綺麗に写し出される。 頬にある、黒い蛇が絡まりあう刺青が今にも襲いかかってきそうだ。 「俺はただ魂の後始末をしただけ。 化け物は人を殺した、アンタのほうじゃないのか」 少年が馴れた手つきで銃を払い退け、ゆっくりと立ち上がった。 (だ、駄目だ……。身体が動かねぇ……こ、声も出せねぇ……) 赤い髪の少年は硬直する男とのすれ違い様に、男の耳元で囁いた。 「俺の仕事は魂と肉体を繋ぐ鎖を断ち切ること……」 「ま、まさか!?」 男の血の気は鮮やかに引いていった。 サングラスの奥の瞳はすっかり怯えきっている。 まさに、身の毛がよだつとはこの事だろう。 「そのまさか……」 狭く、暗い路地に男の悲鳴が響き渡る。 夜空にはただ遠くで、ぼんやりと、三日月が踊ってるだけだ。 これはある霧の深い日の深夜3時の出来事である。  
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