隣の席のヒナ

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 見覚えが、ある。  真っ先にそう思った。あの机への突っ伏し方。ベージュ色の髪の毛。白いカーディガン。横にかけられたスクールバック……私はこの人を知っている。  寝ている彼を横目に、取りあえず自分の席に座った。椅子を引いた際に、がたんと音が出てしまったが、隣の彼は起きはしなかった。声をかけるべきか否か。いや、寝ているんだから、挨拶をするには起こさなくちゃいけない…それは悪いだろう。そんな風にぐるぐると思考を巡らせていると、担任教師が入ってきた。皆一斉に席に着く。  「有間、号令。」  出席番号が一番の有間くんは、先生の指名を引き受けて号令をかける。それに従って周りが起立する中、やはり隣の彼は突っ伏したままだった。
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