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母の言葉を信じて生きてきた。
いつどこでも幼い子供の泣き声が聞こえると思わず身体が強張って振り返る。そして心の中でじっと見張ってみる。殴られて良い子供なんてこの世に一人もいないから。
母はよく叩く人だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
私は頭を腕で覆ってひたすらに助けを請っていた。
水をコップに注ぐのはいつも緊張した。
こぼせばグーがとんでくるから。
「貴方は暴力を受けていた」
そう言われた時、泣きながら「いいえ」と答えてた。
母さんは叱ってただけだ、私が悪いからだと泣きながら思ってた。
けれど子供の泣き声が教えてくれた。
貴方は泣いて悲鳴をあげて助けを請うほど異常な体罰を受けていたと。
虐待された幼児の死亡事件がメディアで取り沙汰されだすと、母は静かに暴力を振るうのを止めた。
母も苦しかったんだ。
過ぎた事だし私はそこまでわるくないかなっと思う。
母さんはたまに恨んでるんだろと私を責めるが、ちゃんと育ててもらったし、そこまでわるく思ってないよ。
イライラするのなんて誰にでもあるじゃない。
痛かったし恐かったし辛かったけど、母さんと離されて暮らすよりはましだと思ってたよ。
それに殴られたから、私は決して子供は殴らない。
母さんは料理下手だけど、掃除出来なくてゴミ屋敷だけど、
産んでくれて有難う。
そこまでわるくないかな、と思う私の幼い頃の思い出。
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