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続きました↓
「こちら先に診察券をお返ししますね」
病院内の受付に1人の男、鷺宮白滋が立っている。
彼は作家、職業病の腱鞘炎に悩まされているらしい。本人を見る限り本当に悩まされているのかは微妙だが。
「はーい、どうも。新刊でたらまた持ってきますねー」
にっこりと笑う。
男は診察券を財布にしまうと受付の更に奥でゆっくり揺れる赤い髪を見ていた。
「春日井さーん、今日ちょっと多めに頂戴!」
赤い薬剤師がいつもの湿布をいつもの量手にしたのを見て、受付から声をかける。
病院内はそれなりに静かだが、彼のこの様子には誰も口を出さなかった。
何故なら、
「白滋さん、手ぇ悪化させられたいんですか?全く、進歩が有りませんね本当に。」
赤い薬剤師が口を挟む事を知っていたからだ。
ちょっと怖く感じてしまうような、そんなオーラが漂っている。
しかし男は気にもしていないようだった。
「ごめんなさい、癖でっ」
満面の笑み、良く笑う男だ。
男はそう笑いながら財布から5000円札を取り出して、受付の事務員に渡す。
「少しは学習なさいね。ところで何故また多めに?」
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