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俺の毎日の楽しみは、昼休みにある。
4限が終わるチャイムと共にガヤガヤと騒がしくなった教室の中で、俺は無言のまま弁当が入った袋とペットボトルの緑茶を手にして教室を出た。
人目を盗んで屋上へ続く階段を上ると、俺はゆっくりと扉に手をかけた。ギィ、という見た目通り重そうな音がいつも通り響く。
──扉からちょうど正面。いつものように、彼女がのんびりと弁当を食べていた。
彼女は俺の姿に気付くと、箸を持ったまま右手を軽く挙げた。
「おはよ、如月」
「……もう昼過ぎだけど」
「だって『こんにちは』じゃ堅苦しいじゃない」
相変わらずの仏頂面で彼女は答える。
反論するのも面倒だったので、俺はそのまま彼女の隣に座り、弁当を広げる。彼女は既に弁当の半分を食べ終えていた。
「……食べるの早くないか?」
「如月が来るの遅かっただけじゃない?」
「そうか?」
「そうだよ。……あ、唐揚げ美味しそう。いいな」
「その卵焼きくれるならあげてもいいよ」
「えー……」
「……悩むのかよ」
この会話だけだと「お前らどこのバカップルだ」とかツッコミを入れられそうなので、俺と彼女の名誉の為にこれだけ言っておこうと思う。
俺と彼女は付き合っていない。ただの親友だ。
要するに、俺の楽しみとは、彼女──親友こと向井楓とこうしてだらだら過ごすことなのだ。
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