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今回の仕事は、簡単には終わらなかった。外来種の無断飼育を調査するなんて、探偵の仕事じゃないだろ。探偵人トオルの右頬には、爪の傷がくっきりとあった。
「無理もないですよ。いきなり飛びかかって来たのだから」
助手のメグミが救急箱を持ってきた。
「今度は少し安全な依頼を受けて下さいね」
乱暴に消毒用ガーセを傷口に押し当てて治療するよメグミだが、トオルは顔色一つ変えることはなかった。
「ところで、何か依頼は入ってないか」
「まだダメです。せめて傷が治るまで休業してください」
メグミの言葉も聞かず、ファックスを手にとる。
「だったら、安全な仕事を選べばいい」
心配そうに見つめるメグミ。全く気にも止めず文面を読んでいると、一瞬トオルの手が止まった。
「どう?何かあつた」
「いいのが見つかった。これなら怪我はなさそうだ」
トオルは依頼書を一枚取り出した。
「依頼人を読んでみろ。なかなか珍しいお客様だぞ」
「衛生局長サカイって役所からの依頼じゃない。どうして民間に仕事を頼んでくるの」
「事情があるのかもな」
メグミは用紙をルーペで確認する。
「どうだ。本物か」
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