仕事依頼

2/6
前へ
/53ページ
次へ
 今回の仕事は、簡単には終わらなかった。外来種の無断飼育を調査するなんて、探偵の仕事じゃないだろ。探偵人トオルの右頬には、爪の傷がくっきりとあった。 「無理もないですよ。いきなり飛びかかって来たのだから」  助手のメグミが救急箱を持ってきた。 「今度は少し安全な依頼を受けて下さいね」  乱暴に消毒用ガーセを傷口に押し当てて治療するよメグミだが、トオルは顔色一つ変えることはなかった。 「ところで、何か依頼は入ってないか」 「まだダメです。せめて傷が治るまで休業してください」  メグミの言葉も聞かず、ファックスを手にとる。 「だったら、安全な仕事を選べばいい」  心配そうに見つめるメグミ。全く気にも止めず文面を読んでいると、一瞬トオルの手が止まった。 「どう?何かあつた」 「いいのが見つかった。これなら怪我はなさそうだ」 トオルは依頼書を一枚取り出した。 「依頼人を読んでみろ。なかなか珍しいお客様だぞ」 「衛生局長サカイって役所からの依頼じゃない。どうして民間に仕事を頼んでくるの」 「事情があるのかもな」 メグミは用紙をルーペで確認する。 「どうだ。本物か」
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加