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―現実世界―
…赤い…夕陽。
私が夕陽を見上げるなんて、もう何年ぶりだろう?
いつも本ばかりに目がいっていたから、自然という物がこんなに綺麗なんて知らなかった。
いや、正確には忘れていただけだろう。
だって昔は目の前の全てが輝いて見えたはずだ。
そうでなきゃ…今まで生きていけなかったし…
いつ頃だろう?世界に関心を示さなくなったのは?
世界は変わらずに綺麗だった。
変わったのは…人だ。
私は成長する中で人の綺麗な心を知り、そして汚い心を知った。
人間ってなんて汚いんだろう。どれだけ汚いんだろう?
その探求心は私に沢山の人の心を覗かした。
そして気付いたのだ。
人間は綺麗であり続けるよりも汚くなるほうが簡単なんだと…
私にとって人間は観察動物みたいな物で、好きとか嫌いとかそんな感情は浮かばなかった。
更に言えば、ただでさえ少なかった友達も高校に上がる時にみんな離れ離れになった。
だから新しい友達ができないのも当然で、私は孤立する事になった。
別に寂しいとは感じなかった。
友達なんて大して重要な物でもなかった。
本があれば私はそれで良かった。
誰も私に関心を示さない。
そう思っていた…
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