恋去る

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俺には、同い年の妹がいる。 泣き虫で内気で……泣き虫で。 とにかく、すぐに泣く。 だから、いじめたくなる。 ガラッ 「あの、あいつが怪我したって聞いて……」 保健室の引き戸を開き、イスに座っていた保健医に尋ねる。 「あら、鷹宮くん。妹さんなら奥のベットで寝てるわよ。」 ふくよかな40代後半のおばさんは人の良さそうな笑みを俺に向ける。 会釈をして奥のベットに向かおうとしたら保健医に呼び止められる。 「そうそう。私これから用事があって、もう学校には戻らないのよ。好きなだけ休んでていいから帰る時に鍵だけしてもらってもいいかしら?鍵は職員室に返してくれたらいいから。」 そう言って、保健医はそそくさと身支度を整え慌ただしく保健室を出て行った。
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