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「お父さん、スゴく心配してたね。」
さっきの親父の顔を思い出して可笑しかったと言って笑う珠子。
「早く解け」
その顔にイライラして、つい怒ったような低い声を出してしまう。
「……はい」
あからさまに落ち込んだ珠子はシャーペンを持ってノートに計算式を書き始めた。
そんなに落ち込むなよ。
「俺だって」
手に持つシャーペンをくるくる回しながら珠子から顔を逸らして呟く。
「え……?」
「俺だって……心配した。」
自分の手元から珠子に視線を移すと驚いて固まっていて、次の瞬間、吹き出して笑ってきた。
「お前っっっ!!」
一気に恥ずかしくなり、顔が赤くなるのが自分でも分かるくらいだ。
「ありがとう、お兄ちゃん。大好き。」
笑いながら珠子はそう言って愛おしそうに目を細めた。
ドクンッ
だから……
そんな目で俺のことを見るなよ。
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