276人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば、北野くん帰ったみたいだね?」
SHRが終わり、クラスメートがぞろぞろと出て行く教室で珠子が口を開いた。
確かに、机の横にカバンもかかっていない。
珍しいな、あいつが早退なんて。
「みたいだな。俺たちも帰るぞ。」
カバンを肩にかけ席を立ち上がる。
「あ、はい。」
ガタガタ
俺の呼びかけに慌てる珠子。
こいつは、いつも慌てるな。
「落ち着け、バカ。おいて帰ったりしないから。」
珠子の頭に手を置いて、動きを止める。
「……へへ。昔は、よく頭撫でてくれたよね?懐かしいな。お兄ちゃん、最近は私に触ろうとしなかったから。」
はにかんで笑った珠子から慌てて顔を逸らす。
こいつ……意外と鋭い。
わざと、触らなかったんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!