恋去る

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「そういえば、北野くん帰ったみたいだね?」 SHRが終わり、クラスメートがぞろぞろと出て行く教室で珠子が口を開いた。 確かに、机の横にカバンもかかっていない。 珍しいな、あいつが早退なんて。 「みたいだな。俺たちも帰るぞ。」 カバンを肩にかけ席を立ち上がる。 「あ、はい。」 ガタガタ 俺の呼びかけに慌てる珠子。 こいつは、いつも慌てるな。 「落ち着け、バカ。おいて帰ったりしないから。」 珠子の頭に手を置いて、動きを止める。 「……へへ。昔は、よく頭撫でてくれたよね?懐かしいな。お兄ちゃん、最近は私に触ろうとしなかったから。」 はにかんで笑った珠子から慌てて顔を逸らす。 こいつ……意外と鋭い。 わざと、触らなかったんだよ。
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