恋去る

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ガバッ 突進して来る母親を押し倒し、その手から包丁を奪う。 「はぁはぁ……」 どうする? ここで、この人を殺さなければ珠子が殺される。 「お兄ちゃん!何するつもり!?早く!早く外にっ!」 外に行って、その先は? どこに行くって言うんだ? 「珠子……俺の言うこと聞け。外に出てろ。」 俺の言葉に珠子は首を横に振る。 「やだ……やだよ!お兄ちゃん!」 俺は母親の上に跨り、包丁を振り上げる。 ごめん、母さん。 母さんを狂わせたのは俺なのに。 「智司っ!やめろ!」 遅いよ…… 肉の感触が包丁を通して手に伝わってくる。 「さ、とし……」 俺に刺されたこの人は、俺を見て微笑んだ。
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