恋去る

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「い、妹ちゃん!これ以上ここにいちゃダメだ!早く!」 そうだ、北野。 早く珠子を外に連れ出して。 この家から、解放してやってくれ。 母親や父親……そして、俺から…… 「は、離して北野くん!お兄ちゃん!」 北野の腕を振り払い、俺に駆け寄る珠子。 「珠子……好きだ」 好きになって、ごめん。 こんな卑怯な形でお前から逃げてごめん。 「どうして!どうして、こんなことっ!!」 俺の手を取り握りながら、泣き虫珠子は大泣きしている。 珠子の涙が俺の頬を伝う。 「たま、こがすきだから……」 違うか。 伝ったのは珠子の涙じゃない。 俺の視界の珠子がボヤける。 滲むな。 珠子が見えない。 滲むな……
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