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「……たの……ご……」
北野、ごめん。疑ってごめん。
うまく喋れない。
「詳しいことは元気になったら聞くから、喋んなくていい!」
「たま……たの……ぞ」
珠子のこと頼んだぞ……
「分かった!分かったから、いい加減黙れよ!智司っ!!」
なんだよ……
お前まで泣くのかよ。
「なく……なよ……」
「だから、いい加減黙れって言ってんだろ!!」
ぐしゃぐしゃの泣き顔……いい男が台無しだな。
「君、離れてなさい。その手!血に触ったね!」
「俺のことはいいから!智司を早く連れてって下さい!」
救急隊員が来て、俺を担架に乗せる。
駄目だ、意識が………………
『お兄ちゃん』
ああ、珠子……
もう、泣かないで。
お前を不幸にする災いは排除したんだから。
お前はこれから笑って生きて…………
愛していたよ……
だけど、さよならだ…………
fin
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