見えなくても

2/2
前へ
/10ページ
次へ
ふと足を止めて、後ろを振り返る。 ここは彼女が好きだと言っていた場所。 「なぁ、乃亜」 誰も答えない。 「乃亜、」 乃亜なんてもういない。 「…愛してたよ」 彼女が生きていたら、ちゃんと言ってあげられてたのに。 ほんの少し顔を歪め、素直じゃなかった昔の自分を嘲笑う。 ごめん。 「…ざまーねぇな。」 こんな場所でいつまでも感傷に浸っているわけにもいかず。 「…」 泣きそうな自分をなんとか抑え、 その場から離れた。 『…いつもそばにいるんだから、そんなことわかってるのに… …私もだよ。』 彼が去ったあとには、顔を赤らめ 静かに微笑む 愛しい彼女が姿があった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加