あらすじと感想

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ざっとまとめるとこのようなストーリーだったのだが、以下に感想をまとめてみます。 曖昧な記憶は誰にでもあり、新たな現実の前に過去の記憶は塗り替えられてしまうと言った事は誰にでもあるだろう。 また、過去の記憶と目の前の現実の間に整合性がない場合、過去の記憶を忘却し、現在のあるがままを受け入れると言う行為を人は営み続けるだろう。 私たちの住む後期資本主義とカテゴライズされる社会においては、一行の広告が消費者の中にこれまでに無かった欲望を生み出し、消費者の過去を忘れさせ、新たな欲望に基づく世界を再構築させる。新たな消費材(商品)を購買する事によって、現在の社会の一員となり、共同してねつ造された世界を生きる事になる。その営みは資本のドライブが要請する限り延々と続けられるだろう。 別役実の作った芝居はこうした私たちが住む世界を戯画化したものに違いない。 つまり従来の演劇が、あるがままの現実を切り取りドラマタイズし、より精神浄化を引き出させる演出で味付けされ観客の前に供出されるのに対し、別役の芝居はまず結果を突きつけ、それに従って過去の現実の記憶を歪曲させ世界を作り変えてしまう。それは登場人物の内面含めての事だ。 この芝居は従来の芝居とは方法論が全く反対なのである。 さらに戯画化を推し進めればつかこうへいの「熱海殺人事件」のような芝居になるだろう。
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