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「殿、仕事を」
「殿、署名を」
「殿、採寸を」
家臣に囲まれている人物は、聞く耳を持たずゴロゴロとしている。
「殿、文です」
そう言って入って来たのは蓮に鼻血と命名されてしまった名を雪次郎。
「要らん」
キッパリ言い切った人物…将軍は刀を持って立ち上がった。
「ですが、蓮ど」
雪次郎が名を言った瞬間、その手から文は消え、嬉々とした表情で上座に座っている将軍。
周りの家臣もホッとしたように少しだけ離れると将軍を見守る。
「仕事持って来い!」
屍のようだった将軍からは火があるかのように錯覚する程のやる気が溢れている。
家臣達は次々と仕事を運び、将軍はそれすら上回る速さで筆を進め、口で指示を出す。
その脇には『将軍へ』から始まる、文字が綴られている。
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