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――純黒の世界に散らばる一縷の光達。
その頼りなさげな光達は、しかし総てを飲み込む黒の中に確かに存在していた。
抗うように、もがくように。
確かにその存在を精一杯示していた。
それは希望と絶望の狭間。極と極がせめぎあう美しき空間。
そこに、二人の女性が対峙していた。
一方は、青海色の柔らかな髪を揺らす女性。緑のドレスか法衣か、人の感性では表現しえない衣服を纏い、その穏やかな瞳を相手へ向ける。
もう一方は、白銀色の艶やかな髪を流す女性。漆黒色のドレスか鎧か、人の感性では捉えきれない装備を纏い、その凛々しい瞳を相手へ向ける。
――青海の女性は、その手に世界を模した幻青色の宝珠を。
――白銀の女性は、その背に世界を揺るがす冥黒の大剣を。
彼女達の周りの空間は七色に輝き、瞬き、その表情を一時も待たず変化させる。
「……なぜだ」
永遠さえ存在し得そうなその空間と静寂の中、やがて白銀の女性がその鈴のような声を揺らした。
。
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