65人が本棚に入れています
本棚に追加
白銀の女性は、その背に背負う冥黒の大剣へと手をかけた。
そして、それをゆっくりとした動作で引き抜く。
剣に装飾はない。色もない。黒が剣の形を創ったかのような剣だった。
「あなたならそうするでしょうね……。私も覚悟は決めていました」
「なら、話は早いな。武器を取れ」
「大切な友を、かけがえのない存在を失う覚悟。これもまた罪なのでしょう」
「……何を」
「さようなら。私の大切な大切なあなた」
「なっ……!」
白銀の女性は目を見開いた。冥黒の剣を構えるが、それは既に手遅れ。
(まさか……、これは……!?)
白銀の女性が歯噛みする。
「世界が……割れる……!」
足元に浮かぶ青い巨大な、全貌をも見渡せないような球に、一筋の光が走る。
そこから、対峙する彼女達を引き裂くように、あるいは決別のように光の奔流が溢れだし、その光に沿って、青い球はゆっくりと二つに分かれていく。
やがて、割れた世界の奔流は、白銀の女性をも飲み込んだ。
「っ、イリアァァアァアアァアアァア!」
白銀の絶叫もやがて光に飲まれ、聞こえなくなった。
青海の女性――イリアは、その純白の光を慈しむように眺める。
「ごめんなさい。あなたの分まで頑張るから……。罪は私が背負うから……」
星のような碧眼から、煌めくものが頬を伝った。
「さようなら、シュヴァルツ」
――それは、まるで一筋の流れ星のように漆黒の海を滑り落ちていった。
.
最初のコメントを投稿しよう!