65人が本棚に入れています
本棚に追加
「今回の任務は、我等グランドル国――黒鳩騎士団の沽券に関わる重要なものである」
――グランドル国境付近某所。
森に拓けた、普段は旅人や行商の荷車で賑わう主道の一角に、物々しい雰囲気の集団が鎮座していた。
三十名ほどのその集団は整然と並び、その集団を先導するように一頭の魔馬が蹄を鳴らす。
「ゆえに、騎士登用試験の一環といえども失敗は許されん! 任務の失敗は諸君らの騎士への道を閉ざすだけでなく、国の尊厳をも汚すものだと心得よ!」
「「「はっ!」」」
魔馬に跨がる壮年の騎士の言葉に、『騎士見習い』達が一斉に踵を鳴らす。
まだあどけなさも残る男女達だ。
彼等は皆、騎士を目指し訓練学校に通う生徒達。
晴れて今日、騎士の登用試験を迎える事となった学校でもトップレベルの生徒達である。
「では行くぞ! グランドルの正義の為に!」
そう言うと、魔馬に跨がる騎士は踵を返し馬の腹を蹴った。
彼は今回の試験官。他にも本物の騎士が数名、生徒達の後ろに控えている。
彼等は皆、鋭い目つきで生徒らを‘観察’していた。
もちろん、試験の合否を見極めるためだ。
そんな中、一際目につく生徒があった。
.
最初のコメントを投稿しよう!