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滾(たぎ)る猛火を連想させる炎色の髪を、羽根をデフォルメしたような飾りで一本に結わえた少女。
背に鉄芯でも入っているかと疑う程に伸びた背筋に、凜と涼やかに輝くブルーアイ。
袖口を切り落とした黒い戦闘服から伸びる腕はしなやかで、右腕には包帯、左手には包帯の上から更に鉄製のグローブを装備していた。
「なあ、フェニア」
そんな彼女に、隣を歩く、金髪をトサカのように逆立てるの大男が小声で話掛ける。
その背には、魔物の肉を削ぐのに使いそうな無骨な剣を背負っていた。
彼女――フェニアは、少々うっとうしそうに口を開く。
「なんだルーメン。また試験官に叱られても知らんぞ」
「大丈夫だって。それより、本試験前だってのに、昨日から皆お前に一目置いてるみたいだぜ。騎士様が話してるのを聞いたって宿で話題だった」
それは先日、任務へ向かう道中に現れた魔物を一蹴したのが理由だろう。
フェニアという少女は、生徒達の中でも頭一つ飛び抜け、学校で天才とも噂されるほどだった。
「嬉しい限りだが、あまりジロジロ見られるのは好かん。なにせ嫁入り前なもんでな」
「……お前のジョークはセンスに欠けるよ」
「うるさい。私とて女だ。ジロジロ身体を見られては恥じらう気持ちもあるのは本当だ」
「ふーん……。でも、我慢しろよ。今のままいけば、お前合格できるぜ」
そう言ってルーメンは日に焼けた顔で屈託なく笑う。
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