Knights of Glumdal

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「まずい? 当たり前だ! フェニアが死んだんだ! フェニアがだぞ!? 俺のたった一人の……!」 そこから先は口には出さず、ルーメンは剣身を中程で折られた自身の武器を、構うものかと振り回す。 そこに型も何も無い。 ただ振り回されただけの剣は、当然ジャルバに届くはずもなく、回避しつつ半笑いでルーメンを眺めていた。 「愚かしいね」 「なん、だと……ォ!」 「なんだじゃないよ。君だって彼女を追いかけ回してたじゃない」 「俺はフェニアを説得しようと……!」 「黙れ」 突風が吹き荒れた――気がした。 それはジャルバから放たれた禍禍しくも純粋な殺気。 ルーメンは心臓を鷲掴みされたかのような圧迫感と息苦しさに、思わず膝をついた。 そんな彼の視界に入る足。視線を上げれば、死神の妖しく光る眼光がルーメンを見下していた。 「君は随分と独りよがりで何より――子供だね。俺様はあのフェニアって子を愚かしいと揶揄したけど、少なくとも彼女は崇高で気高くもあったよ。彼女の偽善も、悩みながらも自分の意志を捨てられない愚直さも、それは愚かゆえに尊いものだ。彼女の場合は」 だから、と続ける。 「君は彼女といるべきじゃない。独りよがりな君は、気高い彼女には不釣り合いで――何より邪魔だ」 .
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