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瞬間、爆ぜた暴風と共に銀色の弾丸がジャルバを襲う。
目を見開いたジャルバは、それでもなお自身の鎌でその凶器を受け止めていたが、頬に浅く走った傷から垂れる血に驚いた。
殺人鬼との戦いで、酷い有り体となったこの身体だが、この頬の傷は紛れも無く今自分と鍔ぜり合うこの少年につけられたものだ。
「絶対に俺は! お前を! 殺す!」
「ふ、ふふ」
――憎しみか。復讐か。死神たる自分にはぴったりの感情ではないか。
ルーメンの発言にいきり立つ周りの騎士達を静止させ、彼はまた笑う。
「俺様を殺すか。いいよ、君は俺様の部隊に入れよう」
「ジャルバ様!? 彼の発言は軍法会議にかけるべきでは!? 全く今年の候補生はどいつもこいつも……」
叫んだのは黒鳩騎士団を率いるグレイス。
ああ、生きてたのかと大した興味も示さずジャルバは応えた。
「俺様への暴言なんだから俺様が処遇を決める。問題ないだろう」
「しかし……」
「くどいぞ。……さぁ、君。どうする? 俺様の部隊にいれば、それだけ殺すチャンスも増えると思うけど」
ジャルバは満面の笑みでルーメンへ手を伸ばす。
ルーメンはその手をとった。
「……よろしく。楽しませてね」
憎しみが人を強くする。
そんなありきたりな言葉に、期待させてもらおう。
ジャルバは笑みをそのままに、グランドル兵に撤退命令を下した。
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