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「あと、お前の身体目当ての奴はいねぇよ。見るならルーナの方だろ」
ルーメンの言葉にフェニアの片眉が動く。
視線の先には、豪奢な鎧を身に纏った女生徒だ。側面で結わえた流れるような碧髪に加え、なるほど愛らしい顔立ちをしている。
フェニアはムッと唸り、若干の固さの残る声を発した。
「わ、私と奴の何が違うというんだ?」
「胸だろ。それと色気」
「……ふん。お前達のように『胸=色気』だと思っているような野獣共に、私の魅力はわかるまい」
「いやだってお前、男に生まれて欲しかった女子ナンバーワンじゃんか。いいねぇ、女子にモテモテで」
「…………」
目に見えて落ち込み始めたフェニアに、ルーメンは笑う。
だが、騎士の一人が咎めるように咳ばらいをしたので、慌てて居住まいを正した。
「まあ、よ。一緒に頑張ろうぜ。騎士になって、俺達の故郷を奪ったエングランドの奴らに復讐してやるんだ」
「ああ……。そうだな……。だが私は……」
「ん?」
「いや、何でもないんだ。共に頑張ろうルーメン」
フェニアは出かかった言葉を無理矢理に飲み込んで、歩を進めた。
ルーメンの気持ちを考えれば、『復讐などしたくない』などと言えなかった。
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