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世界は、大きく二つの勢力に分割される。
まずは東側の大陸――フェニア達の属するグランドル国が支配し、大陸の大半が山脈となり、大規模な火山帯も存在するボルカナ大陸。
そして西側に、エングランド国が支配する、広大な砂漠に複雑に入り組んだ入り江。更には大密林をも広がるフォルスト大陸。
そしてその大陸の間に広がるのは広大な海――大青海。
更にその大海を地割れならぬ海割れのように、真っ二つにするように走る大瀑布。
まるで世界の切れ端のように、そこから莫大な水が流れ落ちて行く場所だ。
水平線の果てまで走るこの瀑布は『星の亀裂‐ラグナロク‐』と呼ばれ、かつて世界を創造した二柱の神の戦いの傷跡だとされている。
現在、グランドルとエングランドは戦争関係にあり、このラグナロクが航路を断ち切ってはいるが、飛空艇の開発により、その苛烈さは急加速した。
そしてフェニアとルーメンが暮らしていた田舎町も――その戦禍に巻き込まれ、焼き払われてしまった。
別に政治的価値もない町だった。
ただ、空から目についたから、‘とりあえず’焼き払われたにすぎなかった。
フェニアはそれが何より――理由もなく安寧を、幸福を奪われる理不尽が。
そんなことが許されるこの現実が何より許せなかった。
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