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ヴィーヴィルと一緒に暮らし始めて約一ヶ月がすぎた。
あいつはとにかくよく動く。
ちょっと目を離すといなくなってるんだ。
そして匂いを辿ってみると、とんでもない所にいたりして驚かされる。
今だって…
「おーい!シャラー、ここ、ここー!!」
「なっ!ヴィー!!お前なんちゅう所にいるんだ!!そこを動くなよ!」
やつがいるのは10mの高さはあろうかという木の上。
いつの間に登ったんだか…
俺は急いでそこまで登るとヴィーヴィルはへらっと笑う。
「やっぱりシャラは運動神経いいねぇ。猫みたいだった」
「みたいじゃなくて猫なんだろ」
「シャラは猫じゃないよ?」
「まぁ猫じゃあないな」
猫だけじゃない。
いろんな獣の血が混ざってる。
だから俺はなんだかわからない生き物なんだ。
元は人間がベースみたいだけど、この手から生えてる爪はどう見ても人間のものではなくて。
時々ヴィーヴィルを傷つけないかと心配になる。
でもヴィーヴィルは俺が傷つけなくてもよく怪我を作ってくる。
ちょろちょろしてて転んだとか良くある話だ。
「お前はすぐに怪我するんだから、ちっとは考えろよ」
「大丈夫だもーん!ほら、それよりあれ!あれ!!」
俺の話なんて聞きやしない。
俺の服を引っ張りながら指さすそこには鳥の巣があった。
「飯か?」
「違うのー!」
ボカッ
「だっ!」
いってぇな!
グーで殴るな!
グーで!!
「小さい鳥さんがいるのー。カワイイー!」
そう言いながら身を乗り出して鳥の巣を覗き込むヴィーヴィル。
でもあんまりそんな事やってると…
「おひょ?」
「わっ!!」
ずるっと滑りやがったこいつ!
落ちる!
そう思うが早いか、俺はヴィーヴィルを抱きかかえて地面に着地してた。
「びっくりしたー!」
目を丸くしながらそんな事のんきに言うこいつに無性に腹が立った。
「こんの…馬鹿!!だから言っただろう!何が大丈夫だ!!」
「だって大丈夫だったじゃん」
ねっ、と笑うヴィーヴィル。
つまりは俺が助けるから大丈夫ってことか?
うっかり助けちまったけどほっときゃよかった!
そして一回大怪我してみないと、どんだけ危ないか絶対に分かってないんだこいつ!
もう助けてなんかやらねー!
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